ミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」
圧倒的傑作。チェコスロバキアの自由化を危惧したソ連による占領・占領後の監視社会を背景にした男女4人の人生。
言葉・思念・哲学・政治・文化の洪水に浸る幸福な読書体験でした。
読書中、左脳と右脳の両方が刺激される感覚がしました。
ストーリー
ドンファンで医師の男、田舎娘、奔放な女性画家、真面目な学者の男。
4者4様の、人との関わり方のスタンス、価値観や哲学、その個人差等が要所要所で語られ、非常に読み応えがあります。
ドンファンと田舎娘の愛の結末は。4人は政治悪とどう向き合うのか。
主題
恋愛中心というよりは、4人の男女の人間同士の関わり合いや政治との向き合い方含む人生そのものを物語として進めながら
「軽さと重さはどちらが肯定的なものか」
「キッチュ(ある集団が共有する、表面的には立派な、しかし実際は俗悪な、理想)なものへの嫌悪、またキッチュが全体主義政治と結びついた時にキッチュを侵害する事物全てが除去されてゆく」
という2つの主題を繰り返し描き、読後は政治悪が歴史上軽く扱われることへの著者の怒りのようなものが強く印象に残る作品。