Modern Life Is Rubbish

美しいもの。本、映画、音楽、そしてそのほか雑文

映画いろいろ

なるべく短く数行で、ここ最近観た映画たちの設定と感想を。

基本、順不同だけれど、印象的だった映画をなるべく上のほう、あまり印象的でなかった映画を下のほうに。



■No Distance Left To Run(2010年イギリス)
Blurドキュメンタリー映画
幼い頃からの友情、結成、成功、苦悩、いさかい、解散、再結成について。
友情と実際歩んできた道のりをベースに描かれる。
ライブ映像やインタビュー、その他オフの映像などを交えて、作成されている。

★★★★★(5点中5点)

Blurの新アルバムを心待ちにしつつ、YouTubeで先行公開されている「Go Out」「There Are Too Many of Us」「Lonesome Street」、を聴いている。
そして、これまでのBlurの曲たち全部、それからデーモンのGorillazの曲たち全部を改めて毎日聴いている。
それから、とうとう、好き過ぎて手を出していなかった、この映画「No Distance Left to Run」も観た。
この「好き過ぎて手を出していなかった」という感覚は、
たとえるならば、
戦を遊びと捉える将軍が「あの神聖な高地にある砦までは攻めなくても、まだまだこっち側の地上サイドで遊べるし」という風にのたまうような、そんな感覚である。

この「No Distance Left to Run」、
ディスク1がドキュメンタリー映画、ディスク2がライブ映像。
ディスク1の1時間40分ほどのドキュメンタリー映画を観るのに、なんとわたしは4時間もかかってしまった!

字幕で出る日本語訳がイマイチぴんとこなくて、何度も英語を聴き直したりしながら観たのと、
好きな場面は繰り返し観るというこのマニアックな気質とが原因か。

大まかな感想としては、Blur好き、バンド好き、友情もの好きとしては満点の仕上がりになっている。
Blur好きじゃなくてもバンド好きなら、満点レベルで楽しめると思う。
Blur好き、バンド好きじゃなくても、友情もの好きな人なら5点中4点くらいで楽しめる作品になっていると思う。
Blur好きでもなくバンド好きでもなく友情もの好きでもない人にとっては、さほどおもしろくないかもしれない。

この映画についてだけは、別途改めて詳細に書こうと思う。



■彼女を見ればわかること(2000年アメリカ)
女子にまつわる恋愛を中心とした5つの話がオムニバスで描かれる、静かなリアリティあふれる映画。
★★★☆☆(5点中3点)

ひとことでいうと、女子のめんどくささがわかる映画。
10年以上前にほぼリアルタイムでみたときは、これを観て大人の女性になった気がしていた。
けれど、実際に大人の女性になった今観ると、「女子ってマジでめんどくさい」「自分で不幸を背負い込んでしまっている女たちの物語」というネガティブな物語に見える。
その感想の違いがおもしろかった。



■モスキート・コースト(1986年アメリカ)
文明社会を嫌悪する、発明家の父。
彼に連れられて、その家族たちは、北米での生活を捨て、中米の未開の地「モスキート・コースト」で住み、理想の世界の構築を試みるが・・・。
★★★★☆(5点中4点)


原作はポール・ソロー。ハリソン・フォードが父親役、リバー・フェニックスが長男役として出演。
リバーの美しさをめあてで観はじめたが、設定も興味深いし、ストーリーも二転三転で展開も早くいろいろな出来事が起こり、おもしろく観れる。
リバーが父を尊敬しつつも、徐々に父の極端な思想と行動に懐疑的になりはじめる長男を好演。
演技が演技でないように見えるほど、自然でこまやかでせつない表情が印象的。
ハリソンフォードもいつものかっこよく正しく正義に満ちただけの役どころでなく、すごく癖のある人物をさすがの存在感で熱演!
文明vs.未開という表面的なテーマの裏で、教祖的狂気的人物のたどる運命みたいなものを描いているので、物語に深みがある。



■旅立ちの時(1988年アメリカ)
その四人家族は転々と暮らしていた、なぜなら両親は指名手配中のビル爆破テロリストだから。
それでも子どもたちは反発せず親に気を遣い愛をもって穏やかに生活する毎日。
このままだと、高校生の長男の人生はどうなるのだろうか。
★★★★★(5点中5点)


これもリバー・フェニックスが長男役として出演。
ラストシーンが秀逸です。泣けます。
それ以外も泣ける場面はありますが、何はともあれラストシーン。
これぞ映画!という感じです。
リバーは変わらず美しいですが、髪型や少年ぽさなど、「モスキート・コースト」の頃が美しさの頂点かと思われます。
あと、邦題の付け方がいまいちかなあと思いました。
原題は「running on empty」。



風と共に去りぬ(1939年アメリカ)
アメリカ南部のお金持ちの家の美人令嬢スカーレット・オハラ南北戦争でさまざまなトラブルに遭いつつも、自己中心的性格ながらも不屈の精神をもって強く生きていく物語。レット・バトラーという魅力的な色男との恋愛模様も描かれる。その他、アシュレーという浅ーい男にスカーレットが恋心を抱いていると自分で勘違いしている様子や、そのアシュレーの妻メラニーの完璧なまでの誠実ですばらしい聖母のような人柄が描かれる。
★★★★☆(5点中4点)


これって誰が観ても、おもしろく観れるんではないだろうか。
これが今回のいちばんの感想。
やっぱり不朽の名作というのは違う。

13年前に観たときの感想は、以下。
http://d.hatena.ne.jp/bandeapart1/20020515/p1

今回観た感想は、まずそれぞれのキャラが素晴らしくキャラ立ちしているということ。
メインの4人のキャラの描き方が、マンガのようにくっきりしていて、それだけでおもしろいし物語が転ぶ転ぶ。

・スカーレット:勝気で情緒不安定、自己中で感情的、それでも唯一の美点といえる彼女の「不屈の精神」が物語を支える。
・レット:結婚を避けてきた独身貴族で、浮世離れし、世の一般論に流されない、さすらうような色男。世間から見たらちょっと癖のある嫌な奴だが、その余裕と現実的な側面、そして女性に対してストレートな愛情表現と強引さなど、実際はかっこよすぎる男。
・アシュレー:お坊ちゃんで、世間知らずで、現実と向き合えない、気持ち悪い男。
メラニー:優しく慈悲深い、完璧な女神、聖母。人間としてできすぎた素晴らしい人。超悪意のあるスカーレットのことを実の姉妹のように慕う。


それから、以下はメモした名セリフ。

・「あの方は耐える力を授かっていなさる」
スカーレットに降りかかった苦難に対し、黒人メイドが言う言葉。
→(感想)そのくらいの強さを持ちたい。

・「自己満足のつまらん告白は災いを招くだけだ」
自分がアシュレーを愛しているとアシュレーの妻メラニーに告げようとするスカーレットに、医者が忠告するときの言葉。
→(感想)自己満足のためだけの要らぬ言葉を言わないようにしたい。

・「彼女は夢だった。現実に負けない夢だった」
メラニーのことをアシュレーが語る場面。
→(感想)アシュレーは現実に弱い、夢見がちな人物として描かれている。なので、一見、このセリフもとてもアホっぽい。けれども、実際、現実世界のほとんどの男性が、程度の大小こそあれ、女性に対してこういう「夢」というような理想、つまり現実から引き離してくれるようなものとしての理想を抱いているのではないかと思う今日この頃。自分も男性にとっての「夢」のような存在でありたいなあ。



her/世界でひとつの彼女(2013年アメリカ)
最近失恋した主人公男性の新たな恋人は、コンピュータの中にいる人工知能型OSだった・・・。
マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ監督・脚本。
★★★★☆(5点中4点)

実際に近い将来起こりそうな設定という時点ですでにおもしろい。
コンピュータとセックスするんだから、もうそらぶっ飛んでます。けれどリアル。
コンピュータとの恋愛を否定もせず肯定もしない(というか肯定側かな?)作者の考え方が伝わってきて素敵でした。
監督・脚本のスパイク・ジョーンズは、ソフィア・コッポラの元旦那さんということで、ふわふわきらきらのきれいな映像の感性もなんとなく納得。



桐島、部活やめるってよ(2012年日本)
「桐島が部活やめるってよ」という噂をめぐって、その周囲の少年少女たちの学校特有のヒエラルキーと、繊細な感情の揺れ動きを描く青春映画。
★★★★☆(5点中4点)

映画の最後に近い部分での、屋上での、音楽を爆音で流しつつ、セリフ無しの長ーいシーンが素晴らしい。
これぞ映画という感じ。
このシーンを描きたくてこの映画を撮ったのではと思うくらいのシーンでした。



グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997年アメリカ)
監督はガス・ヴァン・サント。「KIDS」や「マイ・プライベート・アイダホ」「エレファント」の監督です。
孤児で不遇な生い立ちの主人公が実は数学天才であり、しかし不遇な生い立ちから心に傷をもっており、心を閉ざして生きている。
そんな中、とある数学教授との出会いを通して、心理学教授兼セラピストの男やもめと出会い、彼とのセラピーの中で徐々に心を開いていく。同時にセラピストのほうも、彼とのセラピーを通して、自分自身と向き合うようになっていく。
★★★★☆(5点中4点)

マット・デイモンハーバード大学在学中に書いた脚本が元になっているとのこと、その才能には頭が下がります。
アカデミー賞脚本賞受賞。
周囲の友人との友情や、セラピストとはぐくんでいく友情に似た関係、などたくさん感動する場面があります。
それから監督がガス・ヴァン・サントということで映像と音楽が美しい。
映像は緑が印象的、音楽は陰鬱ながらも美しいエリオット・スミスが多用されており、せつない雰囲気にしあがっている。
特にエンド・ロールの映像と音楽が美しい。
ストーリー及び設定だけだと、★★★☆☆で5点中3点。
感動を前面に押し出しすぎているところと、設定が孤児が天才というあまり現実的でなく感情移入がしにくい点がある。
ただ、映像と音楽でプラス1点して、★★★★☆5点中4点。



■東京難民(2014年日本)
ある日突然、大学生男子の主人公は、親からの学費や仕送りをストップされ、大学を余儀なく辞めることになり、家賃も払えなくなり、さまざまなバイトをしつつ、ネットカフェに寝泊まりする毎日。そんな中、さまざまなトラブルに遭遇し挙句の果てには夜の世界にまで踏み込んでしまう・・・。主人公に明るい未来は来るのか。
★★★★☆(5点中4点)

一言で言うと、見入ってしまう、引き込まれてしまう、映画だった。
そしてもう一言言うと、観終わった後、なんとも暗い気分に浸ってしまう。
表面的に「暗い気分になる」というレベルではなく、心底の暗い気分、まるで脳味噌が灰色の沼にはまりこんでしまったかのような世界にまで連れて行ってくれる。
それほど、脚本、映像、演技、それぞれ素晴らしいものだったのだと思う。
特に主人公を演じた中村蒼と、ヒロインの大塚千弘の演技は、もの悲しく、印象に残る。
ただ、もう一度観たいかといわれると、もう観たくはない。
そんな映画だった。



■ダラス・バイヤーズ・クラブ(2013年アメリカ)
1980年代当時、無認可だったHIV代替治療薬を密輸販売し、アメリカのHIV患者が特効薬を手にできるよう奔走した、実在のカウボーイの半生。
★★★☆☆(5点中3点)

実話ベースなだけあって少し話がまわりくどいというか長いなあと感じる部分がある。
それでも、設定が「アンチ社会だけど正義の人」っていうクールな設定なので、観れる。
設定というか実話ですが。



ビューティフル・マインド(2001年アメリカ)
研究にうちこみすぎてわけがわからなくなっていく天才数学者の半生。実在するジョン・ナッシュの物語。
★★★☆☆(5点中3点)

途中おもしろくなってくるけれど、ちょっと長いかなあと感じた。
展開のおもしろさ(ちょっとびっくりする展開がある)、単純なきれいな夫婦愛だけじゃない愛の形、などを描いている点が評価されてか、アカデミー賞作品賞、監督賞を受賞しているみたいだけれど、ちょっと重たくて長い映画。



アメリカン・ハッスル(2013年アメリカ)
1970年代後半のアメリカを揺るがした政治家などの収賄スキャンダル、アブスキャム事件を題材にしたドラマ。自由と引き換えに、FBIが仕掛ける悪徳政治家検挙を狙ったおとり捜査に協力させられる詐欺師たちの行く末は・・・。
★★★☆☆(5点中3点)


エンターテイメント映画として楽しめる。
エイミー・アダムスが、普通っぽい顔立ちなんだけれど、それがセクシーでかわいい。




インターステラー(2014年アメリカ)
地球が住める環境じゃなくなってきたので、次に住むための星を探しにいく男の物語。
ミッションと家族と過ごす時間との間の葛藤。次から次へと起こるトラブル。
★★★☆☆(5点中3点)

概念として5次元の存在がでてきたり、発想がものすごい、SF映画



■ガンズアンドゴールド(2014年オーストラリア)
ユアン・マクレガー扮する有名強盗犯と、青年JRが、表面的には父子に近い関係になっていきながら、2人で協力して、裏社会のとある犯罪を実行する。しかし、2人の関係は次第に変化していき…。
★★★☆☆(5点中3点)

犯罪が進行する一方、ユアン・マクレガ―と青年の関係の心を描いたり、裏社会にかかわる若者たちの「普通の日常」へのあこがれを描いたりと、感情面もきちんと描かれており、エンターテイメントとしておもしろく観ることができる。
「トレイン・スポッティング」のユアン・マクレガーも、アメリカ映画にもうずいぶん出ているので、スコティッシュな英語アクセントがだいぶなくなっています。そしていでたちもまるでアメリカ人のように、もさい。
昔の英国風のユアン好きとしては、少々寂しく。
あとはこれも邦題がいまいちかなと残念。
原題は「SON OF A GUN」。